解答と解説
●問1
【解答】 1・2
【解説】
抗精神病薬による代謝異常の詳細は不明ですが、H1受容体遮断作用と5-HT2C受容体遮断作用が食欲増進・内臓脂肪蓄積・体重増加に関与すると考えられています(5)。NMDA受容体拮抗作用は認知症治療薬メマンチンに関連する記載であり誤りです。
●問2
【解答】 2
【解説】
体重増加は服薬アドヒアランスに大きく影響するため、患者の価値観を尊重することが重要です。Shared Decision Making(SDM)を活用し、患者・医師・薬剤師が情報を共有しながら最適な治療法を選択することが必要です(2)。
●問3
【解答】 3・4
【解説】
抗精神病薬の中でも、オランザピンは体重増加や代謝異常のリスクが高いことが知られています(表1)。これは食欲亢進や糖・脂質代謝への影響を介して、短期間で顕著な体重増加を引き起こす場合があるためです。そのため、体重増加に強い不安を抱く患者に対しては、代替薬の検討が臨床上重要となります。一方、アリピプラゾールおよびブレクスピプラゾールは、いずれもドパミンD₂受容体部分作動薬(partial agonist)として作用する薬剤であり、従来の抗精神病薬に比べて体重増加や代謝異常のリスクが比較的少ないとされています(3)。さらに、セロトニン受容体への作用も併せ持つことで、抗精神病効果を維持しつつ副作用プロファイルを改善している点が特徴です。そのため、体重増加に強い不安を抱く患者に対しては、アリピプラゾールやブレクスピプラゾールが代替薬として適切な選択肢となり得ます。ただし、切り替えの際にはリバウンドアカシジアなどの錐体外路症状(EPS)の発現や統合失調症の病態悪化を防ぐため、上乗せ漸減法など慎重な方法で行うことが望まれます。
薬剤師が処方提案を行う際には、患者の不安や生活背景を十分に踏まえ、副作用リスクを軽減できる薬剤を提示することが重要です。

服薬指導のポイント
・抗精神病薬は薬剤ごとに体重増加リスクが異なるため、患者の不安を軽視せず説明する。
・心理教育・食事療法・運動療法を併用することで副作用軽減が可能であることを伝える。
・SDMを通じて患者が主体的に治療に参加できるよう支援する。
今月のこやし
抗精神病薬による体重増加の副作用は、患者に「薬をやめたい」という強い動機を生じさせやすく、服薬アドヒアランス低下の大きな要因となります。そのため、医師・薬剤師が患者の価値観や不安を十分に共有し、薬剤選択を柔軟に行うことが、治療の継続に直結します。
本症例では、薬剤師がトレーシングレポートを通じて患者の声を主治医へ伝えた結果、最終的にレキサルティ(ブレクスピプラゾール)への薬剤変更が実現しました。これにより、患者の不安が軽減され、治療継続につながった点は非常に良い成果といえます。
皆様の薬局でも今回のような相談を受けることは珍しくないと思います。是非、「相談記録簿」にご報告ください。そして、その報告が、他の薬剤師にとって「明日へのこやし」になることを願っています。
【参考文献】
1. 日本イーライリリー株式会社:ジプレキサ,インタビューフォーム(2020年9月改訂,第24版)
2. The American Psychiatric Association Practice Guideline for the Treatment of Patients with Schizophrenia, Third Edition,2021.
3. Leucht,S.,Corves,C.,Arbter,D.et al.:Second-generation versus first-generation antipsychotic drugs for schizophrenia : a meta-analysis.Lancet,373:31-41,2009.
4. Rummel-Kluge,C.,Komossa,K,Schwarz,S.et al:Second-generation antipsychotic drugs and extrapyramidal side effects:a systematic review and meta-analysis of head-to-head comparisons.Schizophr.Bull.,38(1):167-177,2012.
5. 長嶺敬彦・編:抗精神病薬の「身体副作用」がわかる-The Third Disease.医学書院,2009
今月の担当者
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学術委員会 委員
定岡 邦夫



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