解答
3、5
解説
選択肢1:誤り
エプレレノンは添付文書によると「高カリウム血症の患者もしくは本剤投与開始時に血清カリウム値が5.0mEq/Lを超えている患者[高カリウム血症を増悪させるおそれがある。]」には禁忌とされているが、心不全診療ガイドライン2025ではエプレレノンを含む、RAAS阻害薬(ARNI/ACE阻害薬/ARBおよびMRA)の過少投与は高カリウム血症を合併した心不全患者の予後不良因子である可能性が示唆されている。またMRAのHFrEFに対する予後改善効果は血清カリウム値5.5 mEq/L以下では維持されること、MRAはプラセボと比較して高カリウム血症(>5.5 mEq/L)の発生率が高かったが、死亡率は低いことが報告されている(RALES試験)(EMPHASIS-HF試験)。したがって、カリウム値報告は必要だが、中止の提案は適切とは言えない。1)
選択肢2:誤り
「手足のだるさ」、「こわばり」、「力が抜ける感じ」「筋肉痛」「呼吸困難感」は低カリウム血症の症状である。2)
高カリウム血症では、「吐き気」、「弛緩性麻痺(力が抜ける感じ)」がときに生じるが、不整脈が出現するまで通常は無症状である。3)
選択肢3:正解
前述のガイドラインではRAAS阻害薬内服中の心不全患者に対して、血清カリウム値や腎機能のモニタリングを行い、高カリウム血症を認めた場合、原因検索に加えてカリウム吸着薬などによる適切な早期介入を行うことで、RAAS阻害薬の投与量や投与期間が最適化されることが期待される、と記述されている。
また、カリウム吸着薬については,新たな非ポリマー消化管カリウム吸着薬(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム[SZC]・商品名ロケルマ懸濁用散)やパチロマーソルビテクスカルシウム(商品名ビルタサ懸濁用散)は効果の出現が早く、便秘などの消化器合併症が少ないなど、有用性が報告されている。これらの製剤により、高カリウム血症を有する、もしくは既往のあるRAAS阻害薬服用中のHFrEF患者に対して、MRAを含むRAAS阻害薬の目標用量の維持を可能とした試験が紹介されているのでぜひ一読いただきたい。(PEARL-HF試験)(HARMONIZE試験)(REALIZE-K試験)1)
選択肢4:誤り
心不全患者は各臓器の機能低下に加え,多数の薬剤を服用するため電解質異常を惹起しやすい。
特に血清カリウム値と死亡リスクの間にはU字型の非線形の関係が認められ、高カリウム血症、低カリウム血症はともに死亡リスクの上昇と関連している。(血清カリウム値4~5mEq/Lで死亡リスクが低い。)
高カリウム血症は、不整脈や入院,死亡の発生リスク増加との関連が指摘されているため心不全ステージの進行を予防する観点において放置してはならない。1)
選択肢5:正解
2024年6月の調剤報酬改定より、薬局薬剤師による患者フォローアップ対象患者を慢性心不全患者へ拡大する見直しがなされ、調剤後薬剤管理指導料が算定できるようになった。この取り組みにより、心不全の症状悪化、および再入院の回避に繋げると期待される。
心不全は急性増悪(再入院)と寛解とを繰り返すことで心機能が徐々に低下し死に近づく疾患である。急性増悪による再入院は患者の生活習慣に起因する(患者の約半数)と言われ、生活習慣、服薬の徹底など、患者および介護にあたる家族の行動変容を促し、セルフケア能力の向上を図ることが支援の内容と考えられる。3)
心不全患者のセルフケアとは目に見える具体的な行動だけでなく、その背景となる動機や経験、生じている症状に気づき意味付けること、その後どのような行動を取るべきかまでの全てを含む。
セルフケア能力の向上を図るには
1.目に見える行動の実施状況を確認する
- バイタル(体重・血圧値・脈拍・体温)測定
- 心不全増悪時の症状がないか確認する
- 食事療法
- 運動療法
- 薬を服用する
- 定期的に受診をする
- 禁煙、節酒する
- 過労やストレスを避ける
2.患者の内面のアセスメントをする
- 理解度、症状の意味づけができるか
- 知識・スキル・ヘルスリテラシー・認知機能
- 経験・価値観
- 身体機能・合併症の有無
- 同居者や介護者の有無・経済状況 等4)
再入院の多くは、塩分・水分制限の不徹底、服薬管理の不十分さ、感染予防不足などの生活管理上の要因が大きい。さらに高齢者は視覚・聴覚・巧緻動作の低下や認知機能低下により、自己管理が困難になりやすく、家族・同居者の理解と協力が再入院防止に重要となる。また、感染予防(手洗い・マスク・ワクチン接種)、誤嚥性肺炎予防(口腔ケア・嚥下訓練)も有効と考えられる。これらを十分に行うためには看護師・薬剤師・栄養士・理学療法士・ソーシャルワーカーなど多職種による在宅支援体制や、地域連携パスの構築が不可欠である。5)
これらを踏まえ、かかりつけ薬剤師として残薬の有無、服薬の確認、増量時や薬剤追加時の副作用モニタリング、他院への受診の有無、相互作用チェックなどを行い、調剤後の心不全フォローアップで知り得た情報をかかりつけ医だけでなく、訪問看護ステーションやケアマネジャーなど地域で関わる医療職種と情報共有し、包括的な心不全管理を実践すると期待される。
参考文献
1)心不全(HF)診療ガイドライン2025
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Kato.pdf
2)重篤副作用疾患別対応マニュアル
低カリウム血症https://www.pmda.go.jp/files/000224778.pdf
3)薬剤師による心不全服薬管理指導のてびき
https://www.jhfs.or.jp/topics/files/shinhuzenhukuyakukanri_1.pdf
4)心不全療養指導士認定試験ガイドブック
5)後期高齢期にある心不全患者の入退院の実態と支援体制
https://core.ac.uk/download/pdf/228457166.pdf
今月のこやし
今回の患者さんには、ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム(ロケルマ懸濁用散)が追加処方されました。開始時は1回10gを水に懸濁して1日3回、2日間服用し、その後は1回5gに減量して継続する必要があります。処方開始後2日でフォローアップを行い、その内容を主治医へ報告しました。
心不全は急な症状変化への早期対応が予後を左右します。そのため薬剤師は、患者のセルフケア能力を支え、必要に応じて適切な介入を行うことが重要です。積極的なフォローアップを通じて、患者が安心して生活を続けられるよう支援することが、かかりつけ薬局としての役割であり、地域医療への貢献につながると考えます。
本稿が日々の実践に少しでもお役立ていただければ幸いです。
今月の担当者
学術委員会 委員
佐藤ゆかり(写真中央)




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