解答
問1 2,3
問2 イミダフェナシン→パロキセチン→硝酸イソソルビド
問3 クロルフェニラミン→セチリジン→エピナスチン
解説
2024年5月、一般社団法人日本老年薬学会から、日本版抗コリン薬リスクスケールが発表された。抗コリン薬のリスクを正確に評価し、抗コリン薬による薬物有害事象や相互作用を減少させることで患者の生活の質(QOL)の向上を目指すことが目的とされている1)。
抗コリン薬は、コリン作動性神経系機能に重要な役割を果たす神経伝達物質のアセチルコリンのムスカリン受容体を遮断することによりさまざまな生理機能を阻害する。その内容は認知機能低下・中枢神経作用の障害・運動機能障害・消化器症状・嚥下機能低下・感覚器障害・排尿障害・循環器障害など多岐にわたり、さまざまな副作用をもたらすとされている1)。
抗コリン薬リスクスケールにはリスク評価方法として、個々の薬のリスクを検討する方法と、複数の抗コリン薬を併用している場合の総抗コリン薬負荷を検討する方法があり1)、高齢者におけるポリファーマシー・長期複数投与の評価尺度として紹介できればと考え、今回の問題作成に至った。
問1
① ファモチジンの添付文書には腎機能低下患者への投与法が明記されている。また、その基準としてクレアチニンクリアランスが用いられている2)。この患者の推算クレアチニンクリアランスは75.07mL/minであり、(Cockcroft-Gaultの式 (140 – 年齢) × 体重 / (72 × 血清クレアチニン値)に当てはめて計算した)腎機能の低下はみられないと考えられるため、①は適切ではない。
② この患者はα1aα1d受容体遮断薬のタムスロシンと5α還元酵素阻害薬のデュタステリドを服用中であり、前立腺肥大症の治療中であるとわかり、抗コリン薬による排尿困難や尿閉のリスクがあると考えられる3)。ガスター10Ⓡの主成分であるファモチジンは、抗コリン薬リスクスケールにてスコア1とされている1)。この患者はこの他にも抗コリン薬を服用中であるため、排尿困難や尿閉のリスクを低下させるためラベプラゾールに変更となった可能性もあり、②は適切である。
また、他に考えられる変更理由としては、PPIはH2ブロッカーに比べ、効果の日内変動が少ないことが考えられる。ガスターⓇ錠は1日1回投与の場合、寝る前に投与することとなっている。それは、ヒスタミンが夜間に作用し、胃酸分泌を促進するためとされている。そのため、昼間も症状がある場合にはPPIのほうが適していることがある。
③ 今回の症状と患者の話から、ラベプラゾールは逆流性食道炎の病名で処方されていることが推測される。逆流性食道炎の場合、8週間までの投与とされている4)ことから、初回処方の日数が8週間を超えていないか確認が必要である。そのため③は適切である。
④ 処方薬のうち、抗コリン薬リスクスケールにてスコアが設定されている薬はニフェジピン・トラゾドン・エペリゾンである1)ため、④は適切ではない。
問2
抗うつ薬の中では、三環系・四環系の抗うつ薬において抗コリン薬のスコアが高くなっている1)。
問3
セチリジンは第二世代のヒスタミン受容体拮抗薬であるが、スコア2である1)。
ヒスタミン受容体拮抗薬は、OTC医薬品に含まれていることもあり、特に総合感冒薬では見逃す可能性がある。こまめな併用薬の聞き取りや患者への周知が重要である。
今月のこやし
抗コリン薬リスクスケールには限界点もある。対象薬が限られていること・同一スコアであっても抗コリン作用の強さに差がある可能性があること・投与量による重みづけが反映されていないこと・未評価の薬剤があること、などである1)。限界点を理解した上での患者背景や患者の生活に合わせた指導・提案が求められる。この記事が、ポリファーマシーの是正・副作用防止に取り組む際のこやしとなれば幸いである。
参考文献
1) 一般社団法人日本老年薬学会 日本版抗コリン薬リスクスケール anticholinergic-risk-scale.pdf
2) ガスターⓇD錠 添付文書 ガスターD錠10mg・20mg
3) 日本泌尿器科学会 男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン2017
2023年アップデート内容
4) パリエットⓇ錠 添付文書 パリエット錠5・10




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