かかりつけ患者に追加されたデスモプレシン酢酸塩水和物口腔内崩壊錠(商品名:ミニリンメルトOD錠50μg)

解答

 2

解説1

1.不適切
デスモプレシン投与前には原因疾患の特定、飲水制限などの生活指導及び行動療法を行うこととされている。

2.適切
併用薬のプレドニゾロンは、「男性における夜間多尿による夜間頻尿でデスモプレシン酢酸塩水和物を投与中の患者には、低ナトリウム血症が発現する恐れがあるため併用禁忌」となっており、疑義照会が必要となる。

3.不適切
高Na血症ではなく、低Na血症の記載である。

4.不適切
デスモプレシン酢酸塩水和物口腔内崩壊錠の服用患者に特に徹底すべき点は就寝前2〜3時間前には、口渇がない限り飲水を避け、起床時までは飲水量を制限することであるため服用時の飲水は避けることが望ましい。

(1)夜間頻尿とは… 1)


「夜間に排尿のために1回以上起きなければならない愁訴」とされている。夜間頻尿ガイドラインによる症状の定義では、「睡眠時間中の排尿回数。初めて排尿のために目覚めた後、排尿のたびに睡眠をとるか、または睡眠をとる意思がなければならない。」とされており、夜間睡眠中の排尿回数を意味し、排尿の前後は睡眠していることになる。
よく似た言葉として、「夜間排尿回数」があるが、これは就寝から離床までの排尿回数であり、入眠するまでの排尿や早朝に覚醒した後、まだ眠りたいのにそれを妨げる排尿が含まれる。
夜間頻尿を訴える患者は、夜間に排尿のために起きることに困っており、睡眠等に満足感が得られていないなど生活の質が低下した状況が考えられる。

(2)診断と治療方法 1)
疾患・症候名診断手段・検査方法治療方法・治療薬
多尿
 水利尿
 浸透圧利尿
尿検査、血中ナトリウム測定、血糖測定、排尿日誌*
 尿比重検査、5%高張食塩水負荷テスト、画像診断による視床下部、下垂体領域の病変 検索、デスモプレ心負荷試験による尿濃縮能の確認など
・行動療法(生活指導:
塩分制限、食事指導、運動療法、禁煙など)
・神経変調療法
・その他
(下肢を挙上した30分以上の昼寝、日光浴、弾性ストッキングの使用など)
夜間多尿排尿日誌
多尿のような明確な鑑別診断のフローチャートが存在しないため、病歴・症状の聴取と身体所見が重要
・(男性)デスモプレシン(行動療法や生活指導を行なっても改善しない場合)
・利尿薬(半減期の短い利尿薬を就寝6〜8時間以上前に投与する)、α1受容体遮断薬、抗コリン薬、高血圧薬(カルシウム拮抗剤で悪化する可能性がある)
・(適応外)NSAIDs、三環系抗うつ薬
膀胱蓄尿障害頻尿だけでなく他の随伴症状を確認する。
 病歴、身体所見、尿検査(尿路感染、膀胱がん、尿路結石などを鑑別)、PSA測定、残尿測定、糖代謝、電解質異常、腎機能障害、高血圧、心不全など
・過活動膀胱治療薬
・前立腺肥大症治療薬
・漢方薬
・外科的療法
睡眠障害入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒, 熟眠障害など原因別に鑑別診断・非薬物療法
・薬物療法

*排尿日誌とは
朝起きてから翌日の朝まで、排尿した時刻とメモリ付コップなどで測定した排尿量を日記のように記録する。1回の排尿量(膀胱に溜めることができる膀胱容量)と排尿回数を知ることができ、おおよその原因を知ることができる。
図1の例では、就寝後から朝までの尿量が多く、1回排尿量は正常なので、夜間多尿が夜間頻尿の原因であることがわかる。

       図1

(3)デスモプレシン酢酸塩水和物口腔内崩壊錠について 2)


デスモプレシン酢酸塩水和物口腔内崩壊錠は「男性における夜間多尿による夜間頻尿」の効能・効果を取得した薬剤である。加齢に伴い夜間に下垂体後葉からバソプレシンの分泌が低下し、夜間尿量が増加するが、これを補うのがバソプレシンの合成アナログ製剤のデスモプレシンである。デスモプレシンは腎集合管のバソプレシンV2受容体に作用し、水の再吸収を促進することで抗利尿作用を示す。

             図2

以下の点に注意が必要である。4)
1) 水分摂取の制限
夜間頻尿の治療では、デスモプレシン服用後に水分摂取を制限することが非常に重要である。
服用後1時間以内、および服用後6〜8時間は水分摂取を避ける。
過剰な水分摂取をすると、水中毒(低ナトリウム血症)のリスクが高まる。

2) 低ナトリウム血症のリスク
デスモプレシンは体内の水分を保持するため、血清ナトリウム濃度が低下する可能性がある。

症状: 頭痛、吐き気、めまい、意識混濁、けいれんなど
血液検査: 定期的に血清ナトリウム濃度を測定し、異常がないか確認する。
低ナトリウム血症の初期症状:倦怠感、 頭痛、吐き気・嘔吐


上記の症状が認められた場合には、服用を中断し受診勧告する。

3) うっ血性心不全が発現する可能性
うっ血性心不全の初期症状として、むくみ(浮腫)、体重の急激な増加、動悸、労作時の息切れなどの症状があらわれることがある。
毎日体重を測定し、急激な体重増加に注意する。(目安として3日間で2kgの増加)

うっ血性心不全の初期症状:むくみ(浮腫)
下腿や足がむくむ、顔やまぶたが腫れぼったくなる


上記の症状が認められた場合には、服用を中断し受診勧告する。

4)高齢者の使用
65歳以上の患者では、低ナトリウム血症のリスクが特に高いとされている。
投与開始時には慎重なモニタリングが必要である。使用を開始する場合、少量から始め、反応を確認する。

5) 禁忌事項 3)
以下の患者にはデスモプレシンの使用は禁忌である。


低ナトリウム血症の患者又はその既往歴のある患者
⇒低ナトリウム血症が増悪又は発現するおそれがある
習慣性又は心因性多飲症の患者(尿生成量が40mL/kg/24時間を超える)
⇒低ナトリウム血症が発現しやすい
心不全又はその既往歴あるいはその疑いがある患者
⇒低ナトリウム血症が発現しやすい
心不全が増悪又は発現するおそれがある
利尿薬による治療を要する体液貯留又はその既往歴のある患者
⇒低ナトリウム血症が発現しやすい
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群の患者
⇒低ナトリウム血症が発現しやすい
中等度以上の腎機能障害のある患者(クレアチニンクリアランスが50mL/分未満)
本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者
チアジド系利尿剤、チアジド系類似剤、ループ利尿剤を投与中の患者
副腎皮質ステロイド剤(注射剤、経口剤、吸入剤、注腸剤、坐剤)を投与中の患者

(4)薬局でも行える生活指導:日常生活での注意点3)


夕食後の「水分の摂り方」に気をつける
夕食後、特にデスモプレシンを服用する2~3時間前から翌朝までの飲水は、
のどが渇いたときに口を潤す程度の最小限の量とし、コーヒー、紅茶、緑茶
などのカフェインを含む飲み物やアルコールの摂取は控える。


塩分を控える


規則正しい就寝・起床・食事時間を心がける
夕食から就寝までの時間は3時間程度あけるようにする。


脚を上げての30分以内の昼寝
体内の過剰な水分を夜間に持ち越さないように、むくみがちな下半身の水分を
血管内に戻し、日中のうちに体外への排出を促す。
(昼寝をし過ぎると夜眠れなくなるので30分程度にとどめる)


夕方、軽い散歩をする


夜寝る前にトイレに行く


寝室の温度と湿度を調整する
(冬の冷え対策、乾燥による喉の渇き対策 など)

参考文献

1)夜間頻尿診療ガイドライン(第二版)
2)ミニリンメルトOD錠50㎎ 添付文書、インタビューホーム
3)キッセイ薬品工業株式会社
「ミニリンメルトOD錠25µg、50µgを服用される患者とご家族の方へ」

今月のこやし

夜間頻尿とは、「夜、就寝後にトイレに行くために1回以上起きなければならず、これにより日常生活に支障をきたし、困っている状態」をいいます。
本人や家族の生活に支障がなければ治療する必要はありませんが、通常夜間の排尿回数が2回以上になると、睡眠不足により日中の眠気、疲れが取れない、倦怠感といった症状が出てくるようになります。また、夜中に何度もトイレに行くため、転倒によるケガや骨折のリスクが高まることも問題視されています。
デスモプレシン酢酸塩水和物口腔内崩壊錠25µg、50㎍は多尿・夜間多尿に使用され、「男性における夜間多尿による夜間頻尿」に適応があります。デスモプレシン酢酸塩水和物口腔内崩壊錠60µg、120µg、240µgには適応がなく、禁忌も異なるので注意が必要です。
デスモプレシンは夜間頻尿の改善に有効ですが、水分管理が治療成功の鍵となります。特に高齢者や併用薬がある場合は、低ナトリウム血症のリスクを最小限に抑え医師の指示に従って慎重に使用しなければいけません。
服薬指導の際には、日常生活の注意点を説明し、低ナトリウム血症の初期症状( 倦怠
感、 頭痛、吐き気・嘔吐)、うっ血性心不全の初期症状(浮腫み)が現れたら、すぐに中断し受診するよう伝えてください。
今回の場合はプレドニゾロンを服用しており処方変更になりましたが、併用薬にも十分注意するようにしてください。
夜間頻尿は高齢者によく見られる症状です。薬局での対応にお役立て頂ければ幸いです。

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