エルロチニブ(タルセバ)処方患者において避けるべき相互作用

解答

2,4

解説

がん治療と薬剤師の役割

2024年度診療報酬改定では、がん患者に対する薬剤師の外来での取り組みが評価された。がん薬物療法認定薬剤師、外来がん治療認定薬剤師、がん専門薬剤師のいずれかが従事する病院において、外来化学療法を受ける患者に対して、医師の指示のもと、医師の診察前に薬剤師が服薬状況や副作用の確認を行い、処方提案等をすることで、月1回に限り100点を加算できる1)
 薬局においても、特定薬剤管理指導加算2の算定が可能であり、患者の副作用や服薬状況の確認が重要視されている。

肺がんの現状

2023年の推計によると、日本のがん患者罹患数は約100万人、そのうち肺がんは男性で15%、女性で10%を占める2)。肺がんの最大の原因は喫煙であり、喫煙者のリスクは非喫煙者と比べて男性では4.39倍、女性では2.79倍であった3)。また、副流煙や大気汚染もリスクを高める要因である。

エルロチニブの特徴と注意点

エルロチニブは上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ(EGFR-TK)阻害する薬剤であり、主に非小細胞肺がんや膵がんの治療に使用される。

しかし、エルロチニブは胃内pHに影響されるため、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やヒスタミンH2受容体拮抗薬との併用に注意が必要である。PPIの併用により、エルロチニブのAUC(薬物濃度曲線下面積)が46%低下することが報告されているため4)、ランソプラゾールの併用は避けるべきである。

今回の症例では、ロキソプロフェンによる胃腸障害を予防する目的でPPIが処方されている可能性が推察される。疑義照会を行い、ランソプラゾールを胃粘膜保護剤への変更を提案する。

ただし、医師が胃酸抑制薬の中止が困難であると判断した場合は、ヒスタミンH2受容体拮抗薬への変更を提案する。ヒスタミンH2受容体拮抗薬であるラニチジンにおいては、エルロチニブとの服用タイミングをずらすことでAUCの低下を15%に抑えられることが報告されている5)

ヒスタミンH2受容体拮抗薬に変更された場合、エルロチニブはヒスタミンH2受容体拮抗薬の投与10時間後、次のヒスタミンH2受容体拮抗薬の投与2時間前までに服用する必要がある。エルロチニブが起床時に内服する場合、患者にはヒスタミンH2受容体拮抗薬をエルロチニブ内服2時間後に服用するように指導を行う必要がある。

喫煙の影響

喫煙はCYP1A2を誘導し、エルロチニブの代謝を加速させ、喫煙者では非喫煙者に比べてAUCが64%低下することが報告されている4)。肺がん治療中の喫煙は薬剤の効果を減弱させるだけでなく、合併症や再発リスクを増加させるため、患者には禁煙を強く勧めるべきである。

患者とのコミュニケーション

英国では、医療従事者と患者が協力関係(パートナーシップ)を基盤に情報を共有し、対等な立場で話し合い、薬の使用を決定する「コンコーダンス(concordance)」 という概念が薬物療法の基本となっている。患者が薬物療法を受けるときに、薬剤師を「治療を支援するパートナー」として認識してもらうためには、薬剤師と患者の間に十分な信頼関係を築くことが不可欠である。
調剤薬局では、病院と比べて患者の病状や心理状態に関する情報を得ることが難しい場面がある。薬剤師は患者との良好な関係を築くために様々な対話を試みるが、依然として患者を中心としたコミュニケーションが十分に実現できていないことが指摘されている。
がんのような特有の疾患に限らず、薬剤師は患者に対して一方的に話しがちになることがある。患者の心理状態や社会的な状況を常に意識しながら、患者の言葉を傾聴する姿勢が大切である。この姿勢が、薬剤師を「治療を支援するパートナー」としての認識してもらうきっかけとなる。
患者の治療に対する満足度を向上させるためには、薬剤師が患者のニーズを理解し、対応を行うことが求められる6)

参考文献

1) 令和6年度診療報酬改定の概要【医科全体版】|厚生労働省
2) がんの統計 CANCER STATISTICS IN JAPAN ─ 2024
3) Wakai K,et al. Tobacco smoking and lung cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiological evidence among the Japanese population. Jpn J Clin Oncol. 2006;36:309-24. PMID: 16735374
4) タルセバ添付文書
5) Kletzl H,et al. Effect of gastric pH on erlotinib pharmacokinetics in healthy individuals: omeprazole and ranitidine.Anticancer Drugs. 2015;26:565-72.PMID: 25643050
6) 調剤薬局におけるがん患者と薬剤師のコミュニケーション

今月のこやし

がん患者とのコミュニケーションのポイント

1.姿勢に注意
・常に患者の心理状態や社会的状況を意識し、信頼関係の構築に努める。
・一方的に話すのではなく、患者の言葉を傾聴し、得られた情報から患者の抱える問題点を  
見逃さない。
・患者のニーズに応じた情報提供を行う。
 ・患者の不安に対して配慮が欠けた指導を行うことは、医療者として無責任な印象を与えかねない。

2.言葉に注意
・表現に配慮し、患者が自ら病名を告知していない段階で「がん」や「抗がん剤」といった言葉を控える。
・専門用語を使わず、患者が理解しやすい言葉を選ぶ。

3.環境に注意
・面談の際は、患者の体調やプライバシーの保護に気を配り、患者にとって安心できる環境を提供することが望まれる

くすしのこやし 今月の担当者

佐藤ゆかり(写真中央) 学術委員会  委員

藤井 宏典       学術委員会  委員

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