第31回 マイナンバーカード薬剤情報から適応症齟齬を防止できた症例

解答

解答:② 

 

解説

以下に各選択肢の詳細を解説する。

1. ビソノ®テープ2㎎ 1日1枚 に変更提案→×

ビソノ®テープ2㎎の適応は頻脈性心房細動のみであり、患者の既往歴・現病でないため適切でない1)。また、メーカーの推奨ではないが、ビソノ®テープは下記図のように製剤的にマトリックス型の構造をもち2)3)、切断して使用する事例を散見する。

2.内服のビソプロロール錠2.5㎎/0.5錠 朝食後に変更提案→〇

ビソノ®テープ4㎎0.5枚/日のビソプロロール錠への換算については、1.25㎎/日が妥当である。これは、ビソノ®テープの添付文書にて、ビソプロロール錠との非劣勢試験にて、ビソノ®テープ4㎎とビソプロロール2.5㎎、ビソノ®テープ8㎎とビソプロロール5㎎にて比較がされていることに基づく1)。また、2.5㎎錠は高血圧に適応があり、保険上も問題ない1)。 ビソノ®テープにおけるビソプロロールの消失半減期は単回投与で約12~17時間であり、14日の反復投与では16~24時間となる1)。また、ビソプロロール錠におけるビソプロロールの消失半減期は単回投与で約8時間~9時間であり、定常状態には達する薬だが、内服への変更によって血中濃度の持続時間が短くなる可能性がある。朝も夜も血圧が高いという本症例では、内服へ変更すると血中濃度推移が変わるため、経過観察が重要と思われる。患者に血圧測定と記録の継続をお願いし、電話にて1~2週間後のフォローをいれるのが妥当と考える。

3.肝機能とリウマチの併用薬を確認して交付する→×

ビソプロロールは腎排泄が主体(約50〜70%)であり、主に肝代謝を受けるという記述が間違いである。腎排泄主体の薬剤であるため、腎機能を確認しておくとよい。また、リウマチ治療薬との禁忌・相互作用はないが、NSAIDs による腎血流低下・Na貯留によりビソプロロールの降圧作用が減弱する可能性があるため確認するとよい1)

4.ビソノ®テープ4㎎をあらかじめ全て半分に切って交付→×

切断後の安定性は公開されていないが、アルミ袋を開封後は速やかに使用するよう推奨されており、60日の長期間の安定性は担保されていない1)

5.テープを剥がせばすぐに薬の効果が切れるので安心してと説明→×

ビソノ®テープにおけるビソプロロールの消失半減期は単回投与で約12~17時間であり1)、剥がしても血中濃度は緩徐にしか低下せず、即時に効果が消失することはないため不適切。また、副作用出現時の対応については、主治医の指示を仰ぐべきであるが一般的には脈拍50回/分未満、徐脈症状(めまい・失神など)がみられる場合は医療機関へ相談するよう指導されることが多い。

参考文献

1) ビソノ®テープ添付文書

2)ビソノ®テープインタビューフォーム

3)経皮吸収型製剤使用マニュアル 2.経皮吸収型製剤の構造 | 医療関係者向け情報 トーアエイヨー

4)ビソプロロール錠 添付文書

5)厚生労働省「高齢者の薬物療法の安全対策」

6)患者中心の医療に関する厚労省資料

今月のこやし

本症例では、患者は関節リウマチによる手のこわばりがあり、ビソノ®テープ4mgを半分に切って使用する操作に不安を抱いている。ビソノ®テープは切って使用する例を散見するが、推奨されている使用方法ではない。高齢者や手が不自由な患者では、貼付剤の切断・貼付操作が困難となりアドヒアランス低下につながる。体内動態の差は多少あるが、内服薬(ビソプロロール錠)でも同等の薬理作用が得られるため、患者の身体的状況に合わせて内服薬への変更を医師に相談することは患者中心の医療(Patient-centered care)に基づく妥当な対応である5)6)

今月の担当者

学術委員会 委員 上村里菜

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