わかっているが・・・ビール愛との葛藤

解答

1,3

 

解説

高尿酸血症の治療薬について

・尿酸産生抑制薬:フェブリク(フェブキソスタット)、ザイロリック(アロプリノール)、ウリアデック(トピロキソスタット)

・尿酸排泄促進薬:ユリノーム(ベンズブロマロン)、ベネシッド(プロベネシド)、   パラミヂン(ブコローム)、ユリス(ドチヌラド)


ドチヌラドは選択的なURAT1阻害作用を有する、選択的尿酸再吸収阻害薬である。高尿酸血症の病態をきたす要因の1つにインスリン抵抗性によるURAT1を介した尿酸再吸収の亢進が考えられ、ドチヌラドはそのURAT1を選択的に阻害する。URAT1を選択的に阻害することにより、ABCG2、OAT1、OAT3を介した尿酸の分泌には影響を及ぼさず、URAT1を介した尿酸の再吸収を選択的に抑制し、効率的に血清尿酸値を低下させることが期待される。1)ユリスは、ユリノームやベネシッドと同じく尿酸排泄促進薬のひとつである。従来の尿酸排泄促進薬では重篤な肝障害やCYP2C9を阻害する作用が問題であったが、ユリスは、これらの副作用・薬物相互作用の少ない薬剤を目指して創製された。2)

【問1】誤

治療初期には、血中尿酸値の急激な低下により痛風関節炎(痛風発作)が誘発されることがあるため、 0.5mg1日1回から開始し徐々に増量する。3維持量は通常1日1回2mgで、患者の状態に応じて適宜増減するが、最大投与量は1日1回4mgである。今回が初回投与であるが、1㎎錠が処方されているため医師に疑義照会を行う必要がある。

【問2】正

【問3】誤

ドチヌラド錠は、腎臓における尿酸の再吸収を抑えることにより尿酸を体外に排出する薬であり、痛風発作の痛みそのものを抑える作用はない。そのため、本剤投与前に痛風関節炎(痛風発作) が認められた場合は、症状が治まるまで本剤の投与は開始しないこととされている。主な副作用は、頻度が高い順に、痛風関節炎(5%以上)、関節炎(1-5%未満)、四肢不快感他となっている。

また、痛風関節炎(痛風発作)発現時に血中尿酸値を低下させると、痛風関節炎(痛風発作)を増悪させるおそれがあるため、服用開始後に痛風関節炎(痛風発作)が出た場合は、用量調整をするのではなく、症状に合わせてコルヒチン、非ステロイド抗炎症剤などの併用薬で痛みのコントロールを行う。

【問4】正

ドチヌラド錠の薬理作用により、特に投与初期に尿酸排泄量が増大することから、尿が酸性の場合には、患者に尿路結石及びこれに由来する血尿、腎仙痛等の症状を起こす可能性があるので、これを防止するために十分な量の水分摂取による尿量の増加及び尿のアルカリ化をはかる。なお、この場合には、患者の酸・塩基平衡に注意する。

アルコールは体内のエネルギー源であるATPの分解を促進する。その結果増えたプリン体が尿酸として体内に貯留する。腎臓の機能低下は、更に尿酸の排泄を抑制し、尿酸値の上昇を助長する。

【問5】正

痛風発作を予防するには、血清尿酸値を6㎎/dL以下にコントロールすることが望ましい。そのためには、尿酸降下薬の服用と同時に、肥満の解消、プリン体やアルコールの摂取制限、十分な水分摂取、適度な運動、ストレスの解消などの生活習慣についての指導4)(リンク挿入)が必要である。この患者も飲酒習慣がなぜ悪いのかを理解できるまで繰り返し説明し、患者が自発的に制限を行えるように導く指導が好ましい。

高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン5)では,プリン体の摂取量を1日400mg以下に抑えることが推奨されている。

以下にアルコール及び食品中に含まれるプリン体量を示す。6)

アルコール飲料100g中のプリン体含有率

ビール5.7mg
日本酒1.5mg
ワイン0.4mg
ウイスキー0.1mg
焼酎0.1mg

アサヒビール(株)分析研究所による

食品100g中のプリン体含有率

食品名プリン体含量
(mg/100g)
煮干し、かつお節、干ししいたけ、鶏レバー、丸干しいわし、豚レバー、大正エビ、まあじ、牛レバー など特に多い食品
100~400
まいわし、かつお、車エビ、大豆、牛心臓、するめいか、にじます、生さんま、  あさり など多い食品
50~100
コンビーフ、焼きちくわ、えのきたけ、ほうれんそう、ベーコン、プレスハム
カリフラワー など
少ない食品
20~50
鶏卵、野菜、果物、コーヒー、牛乳、プロセスチーズ、すじこ、小麦粉、かずのこ、ごはん、焼きかまぼこ などほとんど
含まない食品
0~20

痛風 痛みと尿酸を抑える:細谷龍男著、法研発行、1994 より

*服薬指導のポイント

・この薬は痛風発作の原因となる尿酸を体外に排出させるお薬であり、発作が起きた時の痛みや炎症を抑える薬ではないことを伝える。

・服用開始前に痛みが再発した場合は、この薬を飲まずに再度受診していただく。

・薬を飲み始めてから痛風発作による痛みが生じた場合は、自己判断で薬の量を増減せず、医師の指示通りに服用を続け、早めに受診するよう説明する。

・痛みが辛い場合は、手元ある非ステロイド抗炎症剤(今回の場合ナプロキセン錠)を服用可能と説明する。

今月のこやし

個々の食材中のプリン体量についてイメージできていても、一食あたりどれだけのプリン体を摂取しているかについて把握できている方は少ない。

帝京大学薬学部では、プリン体計算プログラム7)を公開し、年齢・性別・身長・体重などの身体情報、尿酸値・痛風発作の既往や、献立を入力することで1日分、1食分のプリン体量の計算が可能である。さらに本プログラムを活用することでエネルギー、食塩量、カルシウム量、野菜摂取量、アルコール量も算出され、栄養指導用のワンポイントアドバイスも表示される。

非常に便利なツールである。患者さんからの栄養相談に対応する前にまずはこのプログラムを使ってご自身のプリン体摂取量等を確認してみてはいかがですか?

【参考資料】

1)持田製薬HP 選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)としてのユリス®錠の作用機序


2)持田製薬HP ユリス 開発の経緯

3)ユリス錠インタビューフォーム

4)なるほど尿酸.com 尿酸値が気になる方のための高尿酸血症情報サイト 持田製薬株式会社

5)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン

6)ビール酒造組合 適正飲酒の取り組み

7)帝京大学薬学部 臨床分析学研究室 プリン体計算プログラムについて

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