痒みを訴える透析患者に増量されたセベラマー塩酸塩錠(商品名:レナジェル錠250㎎)

解答1

 正解は ②、③

  1. 透析患者は水分制限をしており皮膚が乾燥するため痒みが出る。
  2. 正しい
  3. 正しい
  4. 透析患者は甲状腺ホルモンではなく副甲状腺ホルモンが増加している。

解答2

正解は ②、④、⑥

解説

透析患者における掻痒は、はっきり解明はされていないが次にあげる原因が考えられる。

皮膚の乾燥1)

年齢や透析による除水や水分制限によって皮膚が乾燥しやすい状態である。そのため日々のスキンケア(保湿)が大切になってくる。

血清Pや血清Ca濃度が高くなる1)

透析患者は血清Pが増加しやすく、PとCaの結合がおこることで石灰化(異所性石灰化)が生じる。それらが様々な臓器や組織に沈着することで皮膚なら痒みが生じる。石灰化の予防にはCa・P積は55未満を目標とする。そのため血清中のPとCaのコントロールが必要である。

血中の副甲状腺ホルモンの濃度が高くなる1)

慢性腎不全の患者は血清Ca低下、血清P増加により、血中の副甲状腺ホルモンの濃度が高くなる。その結果血清Caが増加し、血清Pと結合して痒みの原因となる。

尿毒素が体内にたまる1)

透析量が少ないと、尿毒素など老廃物が十分に排除されず体内に蓄積し痒みの原因になる。

痒みメディエーター(ヒスタミン、サブスタンスP、サイトカインなど)の過剰産生1)

透析患者は痒みメディエーターであるヒスタミンやサブスタンスP、サイトカインなどが過剰に産生される。サブスタンスPやサイトカインは抗ヒスタミン薬の効果が乏しいため難治となる。

痒みを誘発する物質(内因性オピオイド:βエンドルフィン)の増加2)

中枢神経や末梢神経にあるオピオイド受容体は、疼痛、鎮静、鎮咳、消化管運動抑制などに関わり、μ、δ、κの3種類のタイプがある。この中でκ受容体は透析による痒みに深く関わっている。透析患者では、このμ受容体を活性化させるβエンドルフィンが増加する。通常、痒みを誘発するμ受容体と痒みを抑えるκ受容体のバランスが保たれているが、透析患者の場合はμ受容体が優位になっていると考えられるため、κ受容体を刺激するナルフラフィンが使用される。 

今回の場合、セベラマー塩酸塩が増量されたのは、血清Pの上昇が認められたためである。セベラマー塩酸塩の添付文書には、血清Pが6.0mg/dl未満になるよう増減するよう記載がある。3)

血清リン濃度投与量増減方法
6.0mg/dl以上1回0.25~0.5g(1~2錠)増量する
4.0~6.0mg/dl投与量を維持する
4.0mg/dl未満1回0.25~0.5g(1~2錠)減量する

またリン吸着剤は服用時点が重要になる。リン吸着薬は消化管で食物と混ざることで効果を発揮するため、飲むタイミングを守ることでリン低下効果を最大に発揮する。4)

食直に服用する薬食直に服用する薬
・食べ物のリンと結びついて便中に排泄作用がある。
・食後は胃酸により効果が発揮できない。
・空腹時に服用すると悪心、嘔吐、胃部  不快感が出る。
・胃酸により効果を発揮する。
レナジェル、キックリン、ピートル etcカルタン、ホスレノール、リオナ etc

今月のこやし

  • 透析患者の痒みの原因は

・皮膚の乾燥

・血清Pや血清Ca濃度の増加

・血中の副甲状腺ホルモンの濃度の増加

・尿毒素が体内に蓄積

・痒みメディエーター(ヒスタミン、サブスタンスP、サイトカインなど)の過剰産生

・痒みを誘発する物質(内因性オピオイド:βエンドルフィン)の増加

  • 今回増量されたセベラマー塩酸塩は血清Pが6.0mg/dl未満になるよう増減する。
  • リン吸着剤は服用時点が重要になる。

飲むタイミングを守ることでリン低下効果を最大に発揮する。

  • 薬の増量により、便秘や腹部膨満感がひどくなることがある。

ひどい便秘、持続する腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合は速やかに受診して頂く。

  • 透析患者は皮膚が乾燥しやすく、皮膚が乾燥すると痒みが増す。
  • 乾燥肌ケアのポイント

・毎日保湿剤をしっかり塗る

・熱いお湯での入浴や長風呂は、皮膚に必要なうるおいまでとけ出してしまうため控える

・石鹸の使い過ぎ、ナイロンタオル使用は、皮膚が傷つき痒みが増すため、石鹸を泡立て

手で洗うと良い

・チクチクする衣類は避ける

・部屋が乾燥しないよう注意する 

参考

1) 透析のかゆみワンポイントレッスン 鳥居製薬
2)レミッチ:作用機序 住友ファーマ
3)セべラマー塩酸塩錠添付文書
4)透析患者さんによく使われる薬 じんラボ

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